2009年5月13日水曜日

音をあつめて17 No.057 蓑脇の時水

遅くなりましたが先日集めていた音風景であります。
今回は作成に時間がかかったねー





今回の音風景は、福井県越前市にある「蓑脇の時水」。

事前に環境省のHPでみてみると、間歇冷泉とあり、解説を読んでもいまいちどんなものかが分からない。間欠泉と言えば地面からプシューと湧き出すイメージしかなかったので、いったいどんな音だろうか、と期待が膨らむ。


そもそも、「時水」とはなんぞや?
とりあえず、武生の駅にある観光案内所によって、おはなしを伺う。

「音風景100選にある蓑脇の時水を聴きにきたんですが・・・」
「ああ、時水ですね、ちょっと待ってください・・・」(ごそごそとファイルを取り出す)

ファイルを覗くと、時水の資料のようだが、明らかにどなたかの個人のブログ記事
これだと思う

それにしたがっていろいろ説明をいただく。

まとめると、

・武生の駅から東に車で20分くらいの山あいにある
・途中、イノシシよけの電線があるから手動で動かさなければならない
・車を降りてから現地まではけっこう歩く
・熊が出る(!)

して、時水とは、

・湧き水の量が減ったり増えたりする
・水量が変わることで水の音に変化ができて、それを時報代わりにした(という言い伝えがある)
・ただし、いつ水量が増えるかは分からない
・だいたい、三時間に一回(つまり聴けるかどうかは運次第)

ということだそうだ。



とりあえず武生の駅を出て、20分ほど車を東に走らせると、こんな看板。



やたー。
久々に音風景を意識している音風景に出会いました。
きちんと書いてある(消えかかってるけど)。

地元の方のお話では、あの山の中にあるらしい。




くるまで行けるところまで行って、登るらしい。


というわけで行けるところまで行って、登りました。

こんな感じ。



なにこれ。
道ないじゃん。

熊が出るというので、ギターを持っていく俺。
完全に場違い。
分かりにくいが、かなりの急斜面。



このまま、道なき道をすすむことおよそ40分、汗だくになりながら「なんでこんなことしてんだ」と思うこと3回、何かが見えた!!



何?あれ。
近づいてみると・・・



なんすか?これ。山道に突如現れる謎のオブジェ、まるで現代アートの様相。


どうやらここに、「蓑脇の時水」があるらしい。



そしてこれが、残したい日本の音風景100選に選ばれた、「蓑脇の時水」であります!!



んー・・・
よく分からん


説明によれば、どうやら、この水量が変わって、流れる水の音が変わる、というのが「時水」の正体のようであります。なんか、最大で6時間半変わらないとか書いてある・・・

よーし、こりゃ長丁場になりそうだ、最悪、暗くなる前にここを出ればいいから、なんとか聴けるだろう。まずはこのあたりの風景を楽しんで、それからギターなぞ弾いて、じっくり待とうではないか。


と。


なにやら水の音が大きくなってきたぞ。



え? もう?


時水に辿りつくこと15分、観光センターの人や、村の人に、さんざん「なかなか聴けません」と脅され、長丁場を覚悟してきたのに、もう?



というわけで、みなさま、お待たせしました。
これが、残したい日本の音風景100選に選ばれた、「蓑脇の時水」であります(二つの動画を聞き比べてください)。


増水前の緩やかな流れ



増水後の激しい流れ



いやー、こうしてみると、全然違うね。
現場であんまり分からなかったけど。


さて、時水、水量が増減するのは分かったが、して、なぜ?
間欠泉のように、温度云々ではなさそうだし。

うーん?

と首を捻っているところに、下からなにやら人が上がってきた。
この悪道を登り慣れているこの御仁、お話を伺ってみると・・・




なんとこの時水の様子を見続けて20年という方だった。


改めてお話を伺うと、この御仁、なんと、この時水を「発掘」し、音風景に申請したという、「時の人」ならぬ「時水の人」。

なんでも、20年前、幼少時聴いた、水の流れる音を時報代わりにしたという話を、「本当だろうか?」という思いでこの時水を探りあて、有志で仲間を集め、時水を観れるようにしたという。20年という歳月で仲間は一人減り二人減り、今では一人でこの時水を見続けているとか。

この人がいなければ、僕はここに来ることはなかった・・・



間歇冷泉について、時折ギャグを交えながら語る「時水の人」。やけに慣れてらっしゃる。そしてやけに嬉しそう。


そして、気になっていた、結局、なぜ水量が変わるのか?



お答えは・・・




分からない




だそうです。

全部で五つくらい説があるそうで、一番有力なのは(複雑な)サイフォン原理説なんだそうですが、それも結局は、カパッと山を割ってみなけりゃ分からない、と。したがっておそらくこれからも不明だろう、と。

要するに、不思議水、であります。



お話の途中、「マジックやってるんだよー」と嬉しそうに仰っていました(ステージ名はジャッキー)。正直、あの場所でマジックを見る気にはなりませんでしたので、スルーしましたが、どうやら、時水を案内する際、なかなか見れない場合は、つなぎとして、マジックするというサービスがあるようです。

「時水を守る会」

詳しくは上記リンク参照のこと。
もし上越にお越しの際は是非尋ねてみよう、「蓑脇の時水」。


時水の人、川上一馬さん、ありがとうございました。
結婚記念日、おめでとうございます。
これからも仲良くお幸せに。

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